COLUMN

連載

PLACE|診療所から介護センターまで。川内村の健康をまるっと支える複合施設「ゆふね」

ひと足お先に移住した先輩が、「誰かが移住してきたらまず連れて行きたい!」と思う、とっておきの場所をご紹介。今回は、川内村の医療を支える「川内村保健・福祉・医療複合施設ゆふね」。

福島県浜通り、双葉郡にある川内村。東日本大震災後、村に避難指示が出されたものの、2016年には村全域の避難指示が解除となった。近隣区域に比べて早い時期に解除されたこともあり、現在は80%の方々が帰村し、山々に囲まれた自然豊かな中で約2100人(2019年3月現在)が生活している。

そんな川内村では、震災前から地域医療に力を入れ、病院や医療機関に依存しすぎない治療やケアのあり方を模索してきた。中でも、医療や介護、福祉といった異なる領域同士がお互いに連携し合い「村ぐるみ」で村民の健康を支える取り組みは、大きな特徴となっている。

その拠点となっているのが「川内村保健・福祉・医療複合施設ゆふね」だ。

「ゆふね」を協働運営しているのは、川内村役場の保健福祉課、川内村社会福祉協議会、川内村国民健康保険診療所の3つの組織。ひとつの施設に集まることで、より多くの村民にとって出入りしやすい心身の「よりどころ」となっているそうだ。

建物の特徴は、診療所やデイサービスセンターといった個別の機能を持った空間があるだけではなく、各機関が使える多目的スペースも併設されていること。その名のとおり、乳幼児向けの定期検診が行われる“診断スペース”になることもあれば、高齢者の方々の“レクリエーションスペース”になることもある。様々な機能を果たすことで、高齢者のみならず、様々な世代の方が出入りする空間になっているのだ。

建物の中央部に位置するのはデイサービスセンター。ここには日々、村のお年寄りが集まり、入浴や食事のサービスを受けられるほか、運動やイベントなどが行われている。地域の子どもたちや近隣の大学の学生との交流も盛んに行われているそう。また、運営する各機関がお互いに情報共有を行っているため「急な体調不良、疾患の際にすぐに対応することが可能」だという。

「ゆふね」の施設を案内してくれた保健福祉課の大山さんは「医療、介護、福祉が垣根を越えてつながる施設は、珍しい事例」なのだと、少し誇らしげに話してくれた。これからも村民の健康を支えるために、できることを増やしていきたいという。

「整形外科、眼科、内視鏡検査などを定期的に行っています。村内にはこれらの診療を行える医院はありませんが、安心して村で暮らしていけるよう、この施設を通じてみなさんの健康を見守っていければと思います」。

その地域に暮らす人々のためを思っていたからこそ、ユニークな形で生まれた「ゆふね」。これからも、ここを訪れる人々が生き生きと過ごすための拠点となっていくはずだ。

(2019/12/9取材)

  • 取材・執筆:高橋直貴
    撮影:小林茂太
  • 川内村保健・福祉・医療複合施設ゆふね
    〒979-1202
    福島県双葉郡川内村大字下川内坂シ内133-5