INTERVIEW

インタビュー

南相馬の教育を変えたい!大きな夢を抱く若き塾講師の挑戦

伹野凌さん

年齢:23歳 
出身地:南相馬市
勤務先:京大個別会 
勤務地:南相馬市 
勤務期間:2018年4月~

南相馬市で高校までを過ごした伹野凌(ただの・りょう)さん。その後、関東での塾講師経験を経て、南相馬の教育に携わりたいと考えるようになった。生まれ育った地で大きな夢を抱く伹野さんに、これまでのお話を聞いた。

ある先生との出会いで教師を目指すように

「中学の時はあまり成績がよくなくて。ある先生に高校で出会って、とても熱心に勉強を見てもらった結果、成績が上がりました。その先生に憧れて高校教師になることが目標に。高校卒業後は、神奈川県の私立大学で教育学を専攻し、中学・高校英語の教員免許を取得しました。英語を選んだのは成績が一番上がった科目だったからです」。

都会で教育や情報の質の高さを実感

大学時代は塾講師のアルバイトで、都会の生徒と触れ合いながら教育について学んでいった。
「そこで感じたのは、都会のほうが(南相馬を含む)地方と比べて教育や情報の質が圧倒的に高いということ。特に大学受験で顕著に見受けられました。都会では若い人が塾で教えていることが多く、現役大学生から生きた情報を得られるのは強みです。また、大学受験を専門とした予備校もあり、環境が整っています。私自身、原町高校に通っていた時は大学受験に対する意識が低かったと思います。普通の塾には通っていましたが、受験するにあたって、まず何から始めたらいいのかわからなかった。結果、第一志望の大学には入れず…。あの時大学受験の情報がもっとあれば、もう少しいい大学に行けたかなという思いがあります(笑)。僕が教える生徒たちにはそういった思いはしてほしくないですね」。

同じ信念を抱く塾長と歩みを進める

大学卒業後は京大個別会に内定が決まり、南相馬にUターンした。
「高校教師を目指していましたが、自分自身の受験体験や塾講師のアルバイトの経験を重ねていくうちに南相馬で塾講師をしたいと考えるように。高校の頃、1か月ほどこの京大個別会に通っていた時に、佐藤塾長が『地方の学力は低い』と言っていて、当時は何を言っているんだと思ったのですが、外に出てそれを初めて痛感しました。南相馬の教育を変えたいという、佐藤塾長の考えと自分の考えが一致していたので、ここで働きたいと思いました。現在は小学生から高校生まで約80人の生徒を、塾長と2人で見ています。成績が上がったことを笑顔で伝えに来てくれたり、志望校に合格したことを報告してくれたりした時は報われた気持ちになりますね」。

南相馬に子どもを呼び戻したい

最後に伹野さんの今後の目標を聞いた。
「震災前に比べると若い人は都会の大学へ行って、そのまま都会の企業に入っている。地元に戻らないので若い世帯も減り、子どもも減ってきています。僕みたいにUターンして働くパターンは珍しい。大学の4年間は正月にしか帰省していなかったので、帰って来て町がだいぶ閑散としていることに驚きました。そして南相馬で塾講師を始めて、子どもの学力がだんだんと下がってきていることを感じています。地方に生まれたから志望大学に入学することができなかった、という後悔をしてほしくない。自ら人生を切り拓いていける人になってほしいです。都会との教育環境の差をなくし、最終的には南相馬に子どもを呼び戻すことが目標ですね」。

教育の地域格差をなくすというのは、社会の課題の一つでもある。そんな難問へ果敢に挑む伹野さんは、終始迷いのない口調で話をしてくれた。伹野さんと佐藤塾長の二人三脚で、南相馬の子どもたちの可能性を少しでも広げていってほしい。

(2018/9/12取材)