INTERVIEW

インタビュー

南相馬に集まる起業家を、ユーモアと愛情あふれる言葉で勇気づける。

一関宙さん

出身地:宮城県仙台市 
勤務先:Next Commons Lab南相馬
勤務地:南相馬市 
勤務期間:2018年4月〜

一関宙(いちのせき・はるか)さんは、⼤⼿ヘルスケア企業を経て、教職に就くため地元仙台にUターン。その後、宮城県内の3つの保育所を経営し、東⽇本⼤震災後をきっかけに事業廃⽌(⼀部譲渡)。2014年からは、⼀般社団法⼈RCF(以下RCF)に参画し、東北の復興に携わる。社会事業のコーディネーターとして、2016年からは福島県被災12市町村の⼈材マッチング支援事業に従事し、現在は、地域リソースに対する事業創出などを⾏う、Next Commons Lab(※)南相⾺事務局のチーフコーディネーターとして忙しい⽇々を送っている。そんなバイタリティあふれる一関さんが今の仕事に巡り合うまでとこれからについてお話を聞いた。

仕事をしていくうちに進んでいった社会事業への道

前職のRCFで働くことになったきっかけは?
「震災の時は自分の事業の整理や復旧に精⼀杯でまわりのお手伝いができなかったので、復興支援をできればと思っていました。また、仕事をしていくうちにもっと社会事業全般に携わりたいと考えるようになっていたこともあってRCFで働くことに。当時私は、南相馬の事業者さんの課題を把握して、ニーズに合った人材を首都圏からご紹介したり、地元の方の雇⽤を促進したりしていました」。

Next Commons Labで起業家を支える

RCFの仕事をして4年目のころ、Next Commons Lab南相馬の話が舞い込んで来た。これを機に東京から南相馬に越して来たそうだ。
「以前から友人だった小高ワーカーズベースの和田さんから、Next Commons Labを始めること、事務局のメンバーを募集することを聞きました。そろそろ現場にしっかり入っていきたいと考えている時だったので、思い切って当時住んでいた東京から南相馬に移住し、Next Commons Lab南相馬のスタートアップを担いました。現在は10人のラボメンバー(起業家)を南相馬に誘致するため、採用活動をメインに力を注いでいます。私たちのコンセプトである『予測不能な未来を楽しもう』に共感し、「ゼロからのまちづくり」に魅力を感じるフロンティア精神のある方たちが徐々に集まってきました。長期的に捉えて、地域にとって本当にいい人に来てもらいたいから、今はいろいろな種まきをする時期と思って土壌をつくっています。3年後には芽が出てきますよ」

チーフコーディネーターとして奔走する一関さんが、マネジメントをするにあたって気をつけていることとは?
「私は言葉の力を信じているので、なるべくポジティブな言葉を使うようにしています。あとは自分がダメだった時期に、“勇気“って一番大事だなと思うことがあったので、『大丈夫、大丈夫!』と、とにかく励まします(笑)」。

仕事のチームメンバーとシェアハウスで共同生活

現在Next Commons Lab南相馬のチームは一関さんをふくめ3人。しかもそのメンバーでシェアハウスに暮らしているというから驚きだ。
「今後、拠点がパイオニアビレッジになる予定なので、それまでにチームの感じをつかもうと一緒に住むことになったんです。私は、チームの相互作用や信頼関係にはコンテクスト(背景や事情)の共有が大事だと思っているので、とにかく対話します。3人いつも一緒にいるのに、先日、庭でお酒を飲みながら6時間くらい語っていました(笑)。また、この家はコミュニティの場にもなっているので、地域の方が立ち寄ってくれてお茶を飲んだり、他の地域から来た方とよくBBQをしたりしています」。

新しい働き方を体現していきたい

Next Commons Labでの今後の目標とは?
「⾃分が地域にいかに役に⽴てるか?チームの力がどの程度の波及効果で、どう社会的インパクトにつながるか?ということしか、今は考えていないです。予測不能な未来をかなり楽しんでいますね(笑)。ゼロからいろんな⼈たちと共創していけることが、本当に楽しいです」

また、日々各地を移動しながら仕事をする一関さんに、働き方についても聞いてみた。
「働き方改革で、『副業元年』などと言われていますが、今後は⼀つのことを⽣業にするのではなく、2枚目、3枚目の名刺を持つことが当たり前になってきますね。一人の役割が多岐に渡り、いろいろな地域や仕事と関わりながら、人的資源を配分する時代です。ものすごく責任があるけど、⾃由で主体的な働き⽅=生き方だと思います。『あの人があんなに楽しそうだから』とか『あの人があんなに変わったなら』と、自分の人生の舵取りに覚悟をもつ人が一人でも増えたら、本当に嬉しいです」

人と人をつなぐ仕事をする一関さんはとてもお話し上手だ。だが、意外にも「人との関わりが一番難しくて、苦手だからこそやっている」とお話ししてくれた。だからこそ、丁寧にいろんな人に寄り添えるのだろう。まだ種まき中のNext Commons Lab南相馬。今後の展開がとても楽しみだ。

※地域リソースに対する事業創出などを目的とし立ち上げられた団体。地域リソースの発掘と可視化、セクターを超えたパートナーシップ、起業家の誘致や育成、地域での拠点整備など、さまざまな施策に取り組んでいる。

(2018/9/11取材)