INTERVIEW

インタビュー

浪江町に人が集まる拠点を作りたい。ゲストハウスあおた荘をオープン

和泉亘さん

年齢:26歳 
出身地:福島県
勤務先:あおた荘 
勤務地:浪江町 
勤務期間:2018年2月〜

浪江町に住民や県外からのボランティアの方など、いろいろな人が集まるゲストハウス、あおた荘がある。笑顔が似合う管理人の和泉亘(いずみ・わたる)さんは、浪江町に移り住みあおた荘をオープンさせた。2017年に避難指示(※)が解除されたばかりの浪江町で、なぜゲストハウスを始めたのだろうか?

福島で自分にできる仕事に就くためUターン

「もとは関東の建築企業で働いていたのですが、そこがなかなか大変で(笑)、地元福島に戻って仕事をしようかなと。当時、東日本大地震から6年くらい経っていて、自分が生まれた福島がどういった状況になっているのかまったく知らなかったんですね。何か自分にもできることがないかと仕事を探すうち、復興公営住宅入居者のコミュニティや自治体作りを支援するNPO法人みんぷくの求人を見つけて、から働くことになりました」。

浪江町にゲストハウスを作りたい

「みんぷく」では浪江町に住んでいた方々の支援に携わったそうだ。2017年春、浪江町に避難指示解除(一部地域を除く)が出た。
「当時、浪江町の方々が『戻りたいけど戻れない』と言っているのをよく耳にしました。震災から6年が経ち、生活の基盤が外にできている方も多かったので、戻れるのか不安に思っていたのです。避難解除をされてからは週に2、3回、浪江町にボランティアへ行くようになりました。町に必要なものを模索していくうち、人が集まれる場所が全然ないということが見えてきた。ボランティアの人が来ても、泊まるところも話し合いをする場もない。そこで、誰でも気軽に立ち寄れて、泊まることもできるゲストハウスを作ろうと考えました」。

あおた荘と共同運営者・小林さんとの出会い

和泉さんは浪江町への移住を決意し、住居でありながら、同時に人が集まれる場所を探し始める。場所探しは難航したというが、浪江町の区長の協力があり、2017年の8月にもともと下宿だった一戸建てを借りることができた。
「7年間も人が住んでいなかったので、まずは大掃除から始めました。せっかくならイベントとしてやろうと思い、のべ50人くらいの方々にお手伝いただいて、ようやく人が寝泊まりできる場所になりました」。 さらに、一緒にあおた荘を運営することになる小林奈保子さんとの出会いもあった。小林さんは役場職員と結婚し、浪江町に越してきた方だ。
「小林さんはもともと復興支援の仕事をしていた方なので気も合って、一緒にあおた荘をやろうということになりました。2人いると決断が早いところがいいです。ゲストハウスの運営をしつつ、ここでヨガ教室や馬頭琴の音楽イベント、小林さん企画の女子会などいろいろなイベントを開催しています」。

浪江町への移住希望者の窓口を目指して

ほかにも小林さんと一緒に、浪江町の地域作りをする団体「なみとも」を立ち上げたそうだ。
「浪江町で何かしたいと思って来てくれる若者に、もっと町を知ってもらえるような活動をしたり、将来的に移住して来たいという人の窓口になったり、町民さんとつながるきっかけを作ったりしています。今は浪江町が好きで移住を考えているという大学生が3人います。この町の魅力は人が少ないところで、その分みんなで協力していこうというつながりが強いんですよね。なので、まだ役場が移住者に対するサポートをしていない部分を、僕らが積極的にやっていきたいです。助けてくれる人がいるからこそ人は生きていけるという実感が経験としてあるので、自分も手を差し伸べられるような人になりたいと思っています」

あおた荘には誰にでも開かれているという、親しみやすい雰囲気がある。毎日、住民の方がお茶を飲んでおしゃべりをしにやって来るのだそう。宿泊している大学生も何人かいて、活気も感じられた。和泉さんと小林さんの若いパワーが、浪江町に元気をもたらしているようだった。

※東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い、国が避難を指示した。同原発から半径20㎞圏内と、圏外で放射線量が高い区域が設定され、立入りなどが制限された。

(2018/9/11取材)

  • 取材・執筆:石川ひろみ
    撮影:出川光
  • ゲストハウスあおた荘
    住所:〒979-1521 福島県双葉郡浪江町権現堂御殿南18-8
    詳細ページ:http://aotasou.strikingly.com/