INTERVIEW

インタビュー

広野町から双葉郡地域の障がい者福祉を支える友愛会

社会福祉法人友愛会

業務執行理事兼事務局長 新妻哲二さん
光洋愛成園 生活支援員 石井渚さん

友愛会は、主に知的障がい者の方向けの福祉サービスを提供している社会福祉法人です。24時間対応で生活支援を行う入所施設「光洋愛成園」、昼間に就労の場や創作活動などの場を提供する「ワークセンターさくら」、そしてグループホーム運営および相談支援事業を行う「サポートセンターゆうあい」が事業の3本柱。その業務内容を事務局長の新妻哲二さんに伺うとともに、新卒で双葉郡へUターンして友愛会に就職した石井渚さんのお話を聞きました。

サービスを必要とする人が行き場を失わないように

「こんにちは!」

「ワークセンターさくら」の玄関を入ると、昼間ここに通っている利用者の方々が元気な声で出迎えてくださいました。みなさんはここで創作活動やリハビリなどに励むほか、一部の方は週2回ほど、建物内にある食品加工施設でコンニャクや加工みその生産活動にあたっています。

場所はJR広野駅から車で3分ほど。広い敷地内には「ワークセンターさくら」のほか、障がい者の方が生活支援を受けながら暮らす入所支援施設「光洋愛成園」、そして友愛会の法人事務所があります。友愛会はこのほかにも広野町内で6カ所のグループホームおよび相談支援事業も運営しており、入所・通所を含めて延べ320名(一部重複あり)がサービスを利用しています。

性別・年齢は様々、障がいの内容や程度も、したがって必要な支援も異なる利用者の方々。友愛会事務局長の新妻さんは、その一人ひとり合わせたきめ細かなサポートを提供しているといいます。

「障がいは身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいと分類されますが、ここの利用者はどれか一つではなく重複障がいを持っておられる方がほとんどです。友愛会はもともと知的障がい者を対象としていましたが、法律が変わって他の障がいの方も受け入れが可能になりました。それに伴い、私たちも新しい知識や技能を習得するなどして受け入れ体制を整備しています」

そうした努力を続ける大きな理由は、友愛会がこの地域で総合的な障がい者福祉サービスを提供する唯一の事業者だからです。新妻さんによると、日本では人口は減少しても障がい者の割合は増加傾向。そのような地域において「日中活動系サービスと居住系サービスを提供しているのは私たちだけ。そういうサービスを必要とする人たちが行き場を失わないよう、できるかぎり受け入れていきたい」と語ります。

ワークセンターさくらで製造しているコンニャク製品と加工みそ。通信販売のほか地域の小売り店でも販売。

館内に多数展示された、利用者の創作活動による作品のひとつ。重度の障害があっても活動に参加できるよう様々な工夫も行なわれています。

若手と同時に中堅人材の育成にも注力

友愛会はもともと1991年に富岡町で誕生し、同町内で事業を展開していました。しかし、2011年の東日本大震災と原発事故により県外への避難を余儀なくされ、群馬県高崎市にある国立のぞみの園で5年間を過ごすことになります。避難当初は富岡町にいつまた住めるようになるかわからない状態でしたが、高崎に移った2年後くらいから福島に戻るためのロードマップをつくり始めました。当初はいわき市や田村市など、双葉郡から離れた場所での再開を検討していましたが、土地を見つけるのが難しかったり、その自治体の福祉計画と整合しなかったりと、なかなかスムーズにいきません。やはり、いちばん早く再開できるのは双葉郡だという判断に至り、郡内で最も早い時期に帰町宣言をした広野町での再出発を決めたのでした。土地を探して7棟の施設を新設し、事業を再開したのは2016年春のことです。

「戻った当初は(地域の人口が激減したため)事業として成り立つかどうか不安もあった」と語る新妻さん。それでも帰還者は少しずつ増えていき、一方で他の福祉サービス事業者が減ったこともあり、友愛会の施設利用者数は増加を続けているといいます。あわせて職員の中途採用も進め、現在は震災前とほぼ同じ数の64名(うち世話人が8人)が勤務中。数年前からは新卒も毎年1~2名採用しており、今は30歳前後の年代がいちばん多いそうです。

「利用者さんの年齢は様々ですが、みんな若い職員がサポートしたほうが笑顔になるんですよ。私なんかではダメ(笑)。一方、組織運営という意味では震災避難で40~50代の中堅職員の多くが退職してしまったことは痛手でした。だから、若手の積極採用とともに将来中堅となる人材の育成にも力を入れています」

住み心地のよい地元に戻り福祉の世界へ

そんな若手職員のひとり、石井渚さんは、2023年4月に新卒で友愛会に入職しました。富岡町に生まれ、避難先のいわき市で高校を卒業した後は仙台の専門学校でデザインを勉強したそうです。それがなぜ今ここにいるのでしょうか。

「仙台で就職も考えましたが、やはり都会の生活は自分に合わないと感じたんです。地元に戻って就職しようと決めて仕事を探したら、たまたまここで働いている知人に紹介されて友愛会を知りました。福祉の世界は未経験でしたけれど、お話を聞いて『人の役に立つ仕事』をしてみたいと思いました」

石井さんは現在、生活支援員として、光洋愛成園に入所している方の食事や入浴など生活全般の支援をしています。「人のお世話をする経験は初めてで、新鮮な感覚だった」というデビューからまもなく1年。友愛会の人材育成プログラムに従って「独り立ち基準」をクリア、現在は「一人前基準」を目指して研鑽しているそうです。

「初めて目の前で利用者さんが発作を起こしたとき、私はすごく慌ててしまったんですが、ベテランの先輩は冷静に『こうすればいい』という手順を教えてくれました。私も早くそんな先輩のようになりたくて、日々勉強中です。利用者さんとおしゃべりする時間がいちばん楽しく、やりがいを感じます」

そんな石井さんは、広野町の隣の楢葉町にご両親と一緒にお住まいです。通勤時間は車で15分。「ちょうどいい田舎で、住み心地はとてもいい」と笑顔で話してくれました。

農福連携、富岡での再開、そして・・・

力仕事や夜勤もある障がい者福祉施設での仕事は、決して楽とは言えないかもしれません。でも、この取材では、利用者さんだけでなく働いている職員のみなさんの笑顔もとても印象的でした。新妻さんは、「求職者に選ばれる法人になるために働き方改革を進め、職員の健康管理にも力を入れている」といいます。実際に友愛会はユースエール認定企業*、ふくしま健康経営優良事業所などの認定を受けており、そうした努力が客観的にも評価さ れていることがわかります。

*ユースエール認定=若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000100266.html

最後に、友愛会の今後の取り組みについて新妻さんに伺いました。

「ひとつはワークセンターさくらを通じた農福連携*の推進です。この地域における農業の担い手不足は大きな課題ですから、そこに私たちがどれだけ入って行けるか。既に地域のいくつかの農家さんで農作業の一部を担当しており、これを拡大したいと考えています。

そして今年(2024年)からは、もともと友愛会の施設があった富岡町内の土地でブドウのハウス栽培を開始する予定です」

*農福連携=障がい者が農業分野での活躍を通じ、自信や生きがいを持って社会 参画を実現していく取組
https://www.mhlw.go.jp/content/000605989.pdf

農福連携に加えてもうひとつ、このブドウ畑には大きな意味があるといいます。

「これを足掛かりに富岡町でも就労支援施設の再開を目指したい。双葉郡南端の広野町に加えて郡内のほぼ中央に位置する富岡町で再開できれば、郡北部の浪江町や南相馬市からも通所が可能になります」

さらに、現在の友愛会の事業は成人対象ですが、障がい児向けの福祉サービスのニーズも高いそう。たとえば発達障がいを持つ子どもの保護者は就労が難しく、働き手不足解消のためにも友愛会に期待する声があるといいます。簡単に始められる事業ではありませんが、それでも「双葉郡に戻った社会福祉法人としてそういう使命もあることは認識している。行政とも連携しながら対応を考えていきたい」という新妻さん。その言葉には、地域の障がい者福祉を支え、けん引する友愛会の自信と覚悟がうかがわれました。