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PLACE|まちづくりの入り口「Odaka Micro Stand Bar」

ひと足お先に移住した先輩が、「誰かが移住してきたらまず連れて行きたい!」と思う、とっておきの場所をご紹介。今回は、南相馬市小高区でこだわりのコーヒーをいただくことのできる「Odaka Micro Stand Bar」。

小高の駅前通りを歩いて行くと見えてくるのが「Odaka Micro Stand Bar」。窓には「COFFEE STAND」の文字が。ここは、地域の課題解決に取り組む人材育成を目指す、一般社団法人オムスビが運営するコーヒースタンドだ。そう、団体の名前と同様に、店名の頭文字OMSBを並べると「オムスビ」となるのだ。コーヒーなのに、おむすび…?代表の森山貴士(もりやま・たかし)さんが、ユニークな名前のわけを教えてくれた。

「小さな規模でプロジェクトを始める、という意味を込めて、最初はOMS="Odaka Micro Start”まで決まっていたんですよ。それで、最後に"B=Bar”を入れた時に、自然になるよう"Start”を”Stand”に変えて、愛称として"オムスビ”と読めるようにしたんです」。

一般社団法人オムスビは、地元の高校生などとともに、地域の課題解決に向けたまちづくりに取り組んでいる。店名の由来となった「小さく始める」という考え方は、まちづくりを通じて見えてきた現在の小高を取り巻く状況にも関係している。

「現在の小高では大きな予算ではなく、例えば、高校生5人が頑張ってバイトして集められる50万円くらいの規模でスタートできるプロジェクトが必要なフェーズだと考えています。まずは『自分でもできるかも』って思えることが重要で。お店をつくるということは、仰々しいことだと思うのですが、もっと試行錯誤してもいいし、もっとライトに始めるのもいいと思うんです。何がうまくいくかわからないから、いろいろと試してみる必要があって」。

この場所はオムスビやまちづくりに関わる人々の拠点にもなっている。

「ここの立ち位置としては、”入り口”に近いところはありますね。この地域やまちづくりってめっちゃ面白いぞ!ということを発信すること、あとは、活動を始めてみた人たちの中で『支援させてよ』とか、『一緒にやろうよ』とか、そういった思いのある人たちのコミュニティ支援ができればという目的でやっています」。

コーヒースタンドの立ち位置は「まちづくりの入り口」と言えど、提供されるコーヒーの味は、本格的だ。近年トレンドになっている、一杯ずつハンドドリップで丁寧に淹れた「サードウェーブコーヒー」の少し酸味の効いたおいしいコーヒーを楽しむことができる。納得できる味になるまで2ヶ月ほど試行錯誤したという。

「コーヒーはもともと詳しくなかったのですが、とりあえず勉強しようということで、東京の有名なお店を片っ端から訪問しました。それから『この淹れ方であれば、こんな味』というのをひとつひとつ検証していって仕組みを理解したうえで、自分たちがおいしいと納得できたものを出すことにしたんです」。

お店には地域に暮らす人たちもふらっと立ち寄り、スタッフとの会話を楽しんでいるそう。営業日は、火曜、木曜、土曜。コーヒーを片手に一息入れながら、町に関する情報交換をしてみるのもいいかもしれない。

(2018/12/11取材)

  • 取材:石川ひろみ
    執筆:酒井瑛作
    撮影:小林茂太
  • Odaka Micro Stand Bar
    〒979-2121
    福島県南相馬市小高区東町1-67

    一般社団法人オムスビ
    詳細ページ:https://www.オムスビ.com