INTERVIEW
インタビュー
「木」の可能性を追求し続ける。国内最大級 「FLAM(エフラム)」を運営する「ウッド コア」の挑戦
「福島高度集成材製造センター<以下:FLAM(エフラム)>」は、新たな木材需要の拡大と林業再生を目的に作られた国内最大規模の原木一貫生産型集成材工場です。今まで輸入に頼らざるを得ない状況にあった大型集成材を国内生産できるとあって、全国の建築業界から注目されています。
そして、ここを管理・運営しているのが「株式会社ウッドコア」です。工場長の高増幹弥さんは「木造建築の可能性は今後、ますます広がっていきます!」と話します。
東京から移住しウッドコアに勤務する高増さんに、ウッドコアの取り組みや木造建築の魅力、福島での暮らしを伺いました。
株式会社ウッドコア
業界注目の国内最大級の施設
FLAMは、福島イノベーション・コースト構想に基づく農林水産プロジェクトとして立ち上がった製材工場です。中断面・大断面集成材を原木から一貫製造。木造高層ビルや学校教育施設など、大規模な木造建築用に出荷しています。
今回の取材では、大断面集成材を使った建築中の建物を見学させていただきました。地組みをした状態はなかなか見ることのできない貴重な建設過程です。
「屋根には幅2.4メートル、長さ12メートルの集成材を使用しています。実際にこの大きさを見るとすごい迫力でしょう!地組みをした一番かっこいいところが今の状態です。外壁が付くと木造と言われてもピンと来ないかもしれませんが、こういうところを見てもらえると木の面白さが伝わると思うんです」と高増さん。
2025年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)のメイン会場。中心をぐるりと取り囲む大屋根(リング)の一部には、FLAMで製造した大断面木造集成材が使用されます。
伺ったこの日は、その生産の真っ只中でした。高増さんは、「完成すれば世界最大級の木造建築となります。その一部に、福島の木材が使われているんですよ!」と誇らしげに話します。
転職、転勤、福島での生活
高増さんは大手建築会社で現場監督をしていましたが、ウッドコアの取り組みを知り、やりがいのある仕事に就きたいと単身で福島にやってきました。
「定年を迎えて職場に残る選択肢もあったのですが、まだまだ現場に立ちたいという思いが強くこちらに来させていただきました。以前の建築現場では建築物を作る仕事をしていましたが、ウッドコアではその材料となる木を扱っています。林業再生など、日本の未来にもつながる価値ある仕事だと感じ、転職しました」
生まれは大阪、大学進学から東京住まいという高増さん。転職、転勤という大きな変化に不安に感じることはなかったのでしょうか。
「仕事で地方出張や長期滞在することが多かったので、特に不安に感じることはなかったです。家族にも、『福島で仕事することになるかも』と相談したら、『まだまだ元気でやりたい仕事ができるんだから、いいじゃない!』とむしろ応援してくれたくらいです」と豪快に笑います。
現在、工場長としてすべての製造工程管理や人材育成など重責を担っている高増さん。休日にツーリングに出かけることでリフレッシュしているそうです。
「実は去年、大型バイクの免許を取ったんです。これが大正解で、福島での生活を楽しむ趣味につながりました。自然豊かな土地をあちこち回るのが楽しみになっています。通勤時も、都会のように道が混むことがないので、毎朝ツーリング気分で出勤しています」
木を扱う仕事は今後ますます需要が広がる
現在、ウッドコアでは約50名のスタッフが働いています。年齢層は幅広く、ほとんどの方が未経験からスタートしたのだそうです。見学させてもらうと、最新鋭の設備を備えた近代的な工場で気持ちよく働ける環境が整っていました。
「力仕事というイメージを持つ方が多いと思うのですが、ほとんどの作業は機械がやるので力を使うような作業はほぼありません。資格取得のサポートもあるので、初心者でも安心して働ける環境です」
高増さんが大切にしている仕事の1つが、大型集成材ウッドコアの取り組みをより多くの人たちへ正しく知ってもらうことだと言います。業界が注目するFLAMには、建設会社から高校生までさまざまな団体が見学に訪れます。高増さんはどんなに忙しくてもその一人ひとりに丁寧に応対しているそうです。
「大型施設や高層ビル建設に木材を使おうという機運は高まっています。今後ますます需要のある産業になります」と高増さん。
日本政府は2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指す」と宣言しています。木造高層ビルが注目される背景には、脱炭素に向けた取り組みの推進があります。
また、価格や供給量が重視され外国産木材が主流となっていましたが、国産木材が再び強い注目を集めているそうです。「 豊富な森林資源を有効活用し、山林を整然と維持管理することは洪水や土砂災害の防止にもつながるんです」と高増さん。国内木材の活用は、災害防止に役立ち、地球温暖化を誘引する二酸化炭素削減にも貢献できるのです。
「私が大学で建築を学んだ40年前は、木造よりもコンクリートや鉄骨が重視されていました。けれど、今は違います。木造が見直されてきているんです。可能性のある国産木材を扱い、最先端の環境で仕事ができるのがFLAMです」
2025年の大阪・関西万博のメイン会場では「福島の風を感じてもらいたい」と話す高増さん。木造建築の可能性は、浪江町からより一層広がっていくでしょう。
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取材日:2023年11月
取材、執筆:奥村サヤ
写真、コーディネート:中村幸稚
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◆株式会社ウッドコア◆
https://woodcore.co.jp/
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