INTERVIEW

インタビュー

南相馬で働く外国人たちが、楽しく暮らせるようなサポートを

只野由香利さん

出身地 福島県南相馬市
勤務先 南相馬市外国人活躍支援センター(SAKURA)
勤務地 南相馬市
勤務期間 2021年6月~

2021年6月末、南相馬市のJR原ノ町駅前に「南相馬市外国人活躍支援センター(愛称SAKURA)」(以下、SAKURA)がオープンした。

2021年12月現在、南相馬市には約500人の外国人たちが住んでおり、市内で働いている。市内在住外国人に「南相馬市を好きになって欲しい」という思いと、「地域の人たちも彼らと関わって欲しい」という思いで働いているのが、南相馬市出身の只野由香利さんだ。

南相馬市に住む外国人たちに求められているもの

SAKURAは南相馬市から事業を委託され、市内に住む外国人のサポート事業を行っている。事業の柱は3つ。市内企業と外国人材のマッチングを行う「雇用支援」、外国人が住みやすいようサポートする「生活支援」、市内企業の外国人材受入環境を整備する「企業支援」だ。

オープンしてまだ間もないSAKURAだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で新規入国が制限されている現在、一番需要があるのは「生活支援」、中でも日本語学習講座には多くの人が集まるという。市内在住外国人で最も多いのが技能実習生だ。技能実習生は20代前半が圧倒的に多い。ただ、若くても自国に子どもや家族を残して日本に働きに来ている人も少なくない。

日本で生活し仕事をしていく上で最も重要となるのが言語の問題だ。週に2回開催される日本語講座には、10人から20人の外国人が参加しており、日常会話の練習から日本語能力試験(JLPT)対策として受講する人もいる。

日本語講座は日本語教師と市内のボランティア数名で運営しており、ボランティアは20代~60代以上と幅広い。これまでの生活の中で、何かしら国際交流に関わってきた人が多いという。

画像:(Sakura Minamisoma Foreign Resident Support Center 南相馬市外国人活躍支援センター Facebookページより)

自身の海外経験を、地元で生かす

只野さんも、自身の海外経験がきっかけとなってSAKURAで働いている。市内の高校を卒業後、関東の大学へ進学し、東日本大震災を機にアメリカ留学。そこで海外での活動の魅力に気付き、その後も海外ボランティアやバックパッカーとして世界各地を訪れた。

震災後の海外滞在だったため、どの国に行っても、福島や原発事故のことを聞かれたが、なかなかうまく答えることができなかった。「もっと日本のこと、自分の地域のことを学びたい」と、南相馬市にUターンし市内小高区の、株式会社小高ワーカーズベースに就職した。約3年間地元で学び直した後、SAKURAがオープンするにあたって海外経験を活かしたいと思い、SAKURAで仕事を始めた。

「私の経験ですが、どこの国に行っても、みんなすごく親切にしてくれるんです。自分とはまったく違う価値観、考え方の人と一緒にいるのは楽しいですし、刺激的です。今、南相馬市にいる外国人の人たちにもそう思ってもらえたらと思い、こちらで勤務しています」と話す。日本に在留している外国人には言葉の壁、制度の壁、心の壁の三つの壁が存在するといわれている。SAKURAの活動で、そのすべての壁を取り払うことはできないが、「少なくとも私がかかわっている人たちが少しでも暮らしやすくなるよう、友人や家族のような気持ちでサポートできたらと思います」と只野さん。

SAKURAでは、ハロウィンやクリスマスなどのイベント開催や市内周遊バスツアーなどを企画し、同じ地域に暮らす外国人同士だけでなく、地元の人たちとのつながりをつくろうと活動している。「日本語を学ぶにもイベントに参加するにも、みんなとても素直でシャイな方が多いんです。でも、旅先ではモデルみたいに決めて写真を撮って楽しんだり。彼らは(今の制度では)定住は出来ないけれど、南相馬にいる間に、町を好きになってもらえたらうれしいです」と笑顔を見せる。

画像:(Sakura Minamisoma Foreign Resident Support Center 南相馬市外国人活躍支援センター Facebookページより)

SAKURAでは今後、南相馬市で暮らす外国人と地域の人たちの架け橋という役割も目指すという。 南相馬市が、多様な人たちと共生する未来を描くのに、SAKURAは欠かせない存在になっていくだろう。

画像:(南相馬市ホームページより)