INTERVIEW
インタビュー
相双地域のファッションショーを通じて福島県の縫製工場をもっと明るく!
奥山円美さん
「緊張してます」とインタビューに答えてくれた奥山円美(おくやま・まるみ)さん。相馬市にある株式会社福装21に新卒で入社して以来、会社の方々に支えられて仕事に取り組んできた。また、今参加している相双地区ファッションショーの運営を通じて、福島県の縫製工場を盛り上げようと奮闘中。エネルギッシュに活動する奥山さんに、仕事やファッションショーのことなどお話を聞いた。
家族の影響でファッションの道へ
「祖母が昔からフラダンスの衣装を制作していて、父はアパレル会社を経営しています。そんな環境で育ったので、進学を考える際に自然とファッションの道に進みました。宮城文化服装専門学校で3年間勉強するなかで、パターン(洋服の型)を引いている時間が一番楽しかった。仕事でも続けたいと就職活動をしていくなかで、福装21はCAD(パソコンでパターンを書くソフトやシステム)を初心者でも1から指導してくださるということだったので入社を希望しました」。
まわりのサポートのおかげで初めての一人暮らしも安心
しかし奥山さんの親御さんは、震災後の放射能の影響を心配して福装21がある南相馬での勤務を反対したのだそう。
「ここで働きたかったので、放射能のことを自分なりに調べてこの地区はあまり影響がないと母を説得しました。初めての一人暮らしで心配も多かったですが、家も会社が探してくださって、家賃も出していただいているので、とてもありがたいです。社員の方の中には畑を持っている方もいらっしゃるので、よく野菜や果物をいただきます。最初のほうは一人暮らしに慣れていなかったので、ごはんを作ってきてくださる方もいました。まるでお母さんみたいですよね(笑)。手厚いサポートがあったので安心して生活できました」。
仕事でも活躍の場を広げていく
仕事の面でも会社の方々に支えられ、日々新たなことを学んでいるようだ。
「最初はCADの使い方をなにも知らなかったので、本当に1から教えていただきました。私の仕事の内容はメーカーさんから毎日違うパターンが入ってきて、それを縫製の方々が縫いやすいように、工業パターンに直す作業。時に優しく、時に厳しく教えていただいています」。
奥山さんは母校のパンフレットで福装21での活躍を紹介されたり、学校向けの就職説明会では若手のリーダー格として常務に同行し、会社説明を行ったりしているそうだ。彼女の尽力もあり母校の後輩が新卒で入社したことも。「年齢が近い若手社員が増えるとうれしい」と話してくれた。
相双地区で行うファッションショーに懸ける想い
彼女が今一番力を入れていることは、今年で3回目となる相双地区最大のファッションショー「福島相双オールファッションチャレンジ」の準備だ。東日本大震災の影響を受けた南東北の縫製工場に明るさを取り戻すために始まった。デザイン画を小学校・中学校・高校部門、専門・大学生部門で募集し、上位デザインは南東北の縫製工場が実際に制作する。奥山さんは、実行委員会のリーダー的な存在を務め縫製も行う。
「福島県には300以上の縫製工場があるのですが、あまり知られていません。このファッションショーを通して、縫製工場の存在を知ってもらいたいです。今は準備のまっただなか。今年は学生さんたちから約400枚のデザイン画が届き、その中から私たちが選抜して32体の衣装を制作します。選ばれた学生デザイナーさんには縫製工場まで来てもらい、縫製工場の仕事を見てもらいながら打ち合わせをしていきます。地元のみなさんやクラウドファンディングで応援してくださった方々が楽しみにしてくれているので、期待に応えたい。よろこんでくれる姿を見られるのが何よりうれしいです」
仕事にファッションショーに全力で挑む奥山さんは、たくさんのメモで埋め尽くされたノートを何冊も見せてくれた。努力家の彼女の今後の目標は、「もっと勉強すること」だという。5年後はどんな女性になっているだろう? 地道にコツコツ歩を進めていく頼もしい彼女に、また会いたい。
(2018/9/12取材)
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取材・執筆:石川ひろみ
撮影:出川光 -
株式会社福装21 鹿島ファクトリー
住所
〒979-2333 福島県南相馬市鹿島区寺内字本屋敷1-1
詳細ページ:http://www.fukuso.co.jp/