INTERVIEW

インタビュー

夫婦2人、移住して考える、双葉郡の今と未来

品田真優さん

出身地:福島県楢葉町
勤務先:うつくしまふくしま未来支援センター 相双地域支援サテライト 富岡サテライト
勤務期間:2021年6月~

長田滉央さん

出身地:宮城県仙台市
勤務先:うつくしまふくしま未来支援センター 相双地域支援サテライト 浪江サテライト
勤務期間:2021年6月~

福島大学に本部を置く、うつくしまふくしま未来支援センター。

2021年6月より、その富岡サテライト、浪江サテライトでそれぞれ働く品田真優さん、長田滉央さんご夫妻。

品田さんのふるさとである楢葉町にUターンすることを決めた経緯、ふるさとに移住したからこそ感じたことを聞いてみたら、「移住するってなんだろう」「町の未来はどうあるべきなのだろう」と改めて考えるきっかけになりました。

2人だったから、踏ん切りがついた

「この町が、元々あんまり好きじゃなくて、帰る踏ん切りがつかなかったんです」と品田さんは笑う。

「2011年3月11日、翌日に大学受験を控えた私は関東に出ていたんです。そのまま楢葉町には帰れなくなり、大学に進学して建築学を学びました。その後大学院に進み、建築構造を専門としています。その後、東京で就職した先で知り合ったのが夫です。」

東京で4年間建築の仕事に携わる中でも、地元の復興については頭の片隅にずっとあったと言う。

「都市部の大規模建築の設計にやりがいを感じつつも、地元福島など地方で起きている事象とのギャップに違和感を抱えながら仕事をしていました。 大学生の時にも地元の力になりたいという思いはあったのですが、当時はまだ双葉郡に入れなくて。それでいわきや釜石にボランティアに行ったりしていました。」

その後も単発で終わるボランティアではなく、継続的に関わりたいというもどかしさを抱えたまま働く品田さんに、考え直すきっかけを与えたものまた地震だった。

「2021年2月に、また福島で大きい地震がありましたよね。それで思い出したというか、このままでいいのか考えたというか。」

そのタイミングで、長田さんがうつくしまふくしま未来支援センターの求人情報を見つけたと言う。

「私は元々、首都圏等の都市開発に関する仕事をしていました。仕事には意義を感じていましたが、一方で今の都市と地方の関係に疑問を持っており、震災に対する思いも相まって、福島、とくに浜通りでの仕事を調べていたというのが、求人情報を見つけるきっかけでした。」

品田さんが続く。

「その日の夜中、2人で話をしました。寝ずに布団の中で。それで『行こう!』って。背中を押してもらったというか、踏ん切りがついたのも2人だったからなのかなって。

建築を軸に福島に関わりたいけど、初めは状況把握と関係づくりが必要だと思ったので、募集を見て12市町村に広く関わることができる良い仕事だと感じました。」

うつくしまふくしま未来支援センターでの仕事

「今は、原発事故の被害にあった12市町村の自治体を、広域的にサポートする仕事をしています。私が担当しているのは情報発信ですが、広域マップの作成や、地域外に向けた展示会を計画することを通して、地域の実情に触れ、ここで自分に何ができるかをいつも考えています。

展示会は先日11月23日から西会津で開催していて、この地域のことを知らない人たちに、広く現状を知ってもらい、考えるきっかけになったらいいと思っています。」

一方、浪江サテライトで働く長田さんはこう語る。

「12市町村の役場の職員の方を対象にした、意見交換の機会や横のつながりをつくる場を企画運営しています。復興のその先の未来を見据えた視点で、役場職員の方々と対話し認識を深められたらと思いながら企画しています。」

課題の本質を捉えたい

手段が目的化していることが多いと感じる、その一例が移住定住だと話す2人。

なぜ移住を推進するのだろう。
それは誰のためなのだろう。
その先に何があるのだろう。
移住定住は何のため?
行政の財政を維持するため?
それは住民の方の幸せのため?
では、住民の方が幸せになるための移住定住とは?

「そのような問いについて考えてみると、数字を追うだけではない視点になれるかなと思います。」

と長田さんは話す。

品田さんも、住む場所を移すことに対して続ける。

「町の若者が進学で町外、県外に出て行ってしまって、そのまま外で就職してしまう。それをつなぎとめようとするのではなく、町が背中を押すくらいのことをしてもいいと思うんです。町が魅力的であれば、いずれ力を積んで戻ってくると思う。一度出て行って、どこでもやっていける個を確立して戻ってきてもらったら、それが一番強いのではないかなと。
町の外でスキルを身に付けた人が戻りたくなるような、そして避難先から戻らないことを決めた人がいつでも帰ってこられるような、懐深く、よりどころとなる魅力のある町にするにはどうしたらよいか考えたいです。」

「豊かな自然や、じっくりクリエイティブなことに取り組める空気。ここにはいい所がたくさんあるのだと、帰ってきて気づきました。
東京で写真を撮って活動していた友人も、7月に楢葉町に帰ってきたんです。
人口としての絶対数は減っていても、ここに思い入れのある人、愛着のある人が増えたら、気持ちの上での充実度や密度感は相対的に増えていくんじゃないかな。」

移住して考える、今とこれから

最後に、これからやってみたいことを聞いた。

「今は中間支援の仕事をしていますが、それで終わりじゃなくて、ゆくゆくは建築を通して何か役に立てないかなと。
まだ戻ってきて半年。具体的なビジョンがあるわけじゃないんですが、仕事としてではなく、住民として生活する延長でアクションを起こすことで、本当に必要なことが見えてくると思うんです。
今は人とつながり、町のことをもっと知りたいです。Uターンだからこそ見える、いい部分も悪い部分も見つめながら、ここで生活していきたいです。」

2021年12月取材

  • 取材:中村幸稚・松本美沙
    執筆:松本美沙 撮影:中村幸稚
  • うつくしまふくしま未来支援センター
    https://fure.net.fukushima-u.ac.jp/

    相双地域支援サテライト
    https://ifs.fure.fukushima-u.ac.jp/

    展示会-西会津国際芸術村
    https://nishiaizu-artvillage.com/aruhi-anobasyo/