INTERVIEW

インタビュー

「川内村に古民家カフェを」村の魅力を伝えたい

志賀風夏さん

出身地:福島県川内村
職業:陶芸家・かわうち草野心平記念館 天山文庫管理人
勤務期間:2017年~

福島県川内村にある、かわうち草野心平記念館。
その管理人の仕事と陶芸の仕事を両立しながら、多彩な事業を計画する志賀風夏さん。
志賀さんの思い描く未来に、こちらもワクワクしてきます。

同級生に「おかえり」をいう存在でいたい

「震災で、同級生もみんな村を出ましたし、実家ごと川内を離れた家も少なくありませんでした。就職も村の外でと考える人が多くて。」
そんな中、志賀さんは故郷である川内村に帰る決心をした。
「ここには実家があり、敷地内には両親が移設した古民家があります。私、古民家が好きで。ここで陶芸をしながら、何かできないかなと思ったんです。」
当時は大学の芸術専攻コースに在学中だったが、物づくりに対するスタンスが周囲と違うことに戸惑っていたという。そんなときに、川内村の求人を見つけた。
「もうタイミングです。大学やめて帰ろうって。」
最初はカフェでアルバイトをしていたが、すぐに管理人の仕事に空きが出た。
また、川内村に帰ってきた理由には、同級生への思いもあった。
「私が帰らないと村に同級生が誰もいない。誰もいないところにはみんなも帰りにくいだろうなって。」
同級生にとって、川内村が過去のものになってしまうのではと想像したという。
「私はやっぱり川内村が好きだったんです。」

陶芸家と、記念館の管理人という2つの仕事

両親から引き継いだ陶芸の仕事をしながら、かわうち草野心平記念館の管理人として働く。
川内村で毎年開催されている、川内の郷かえるマラソン。志賀さんが手がける参加賞メダルは、もちろん陶器でできている。
「毎年二千何百個って作るんですけど、いつも半年以上かかって。」と笑う。
機械で行う焼入れ以外は、全て手作業。
「型を作って、一枚ずつ粘土を詰めて、焼いて絵を付けて。ここの仕事が16時くらいに終わるので、それから陶芸の仕事ができてちょうどいいんですよね。」

管理人としての仕事内容もさまざまだが、中でも来館者への解説が好評だ。
「元々解説はなくて、『ご自由に見てね』という感じだったんですけど、魅力をより知ってもらおうと解説を始めました。学習遠足などで来る子どもたちにも、解説は必要だなと思って。」
数多くの詩を残した草野心平。どんな人で、誰と交流があり、川内村でどのように過ごしたのか。
そして村が彼に贈った天山文庫。その構造上の特徴や、ここがどう使われてきたのか。
「ここに勤めるほどだから、元々草野心平に詳しいんでしょって言われるんですが、そんなことはないんです。
作品や生涯、趣味嗜好、天山文庫の構造、ここにある植物…少しずつ知識をつけてきました。
今はずいぶん詳しくなりましたよ。」
四季折々の自然と相まっていつ来ても楽しめると、ここを繰り返し訪れる人は多い。

好きな古民家を活かして村の魅力を伝えるカフェをつくりたい

「古民家を活かして、カフェをやりたいんです。」
それも、ただのカフェではない。
「福島大学には、川内村に実際に来て学ぶフィールドワークの授業があるんです。その発表の場が、会議室じゃなくカフェだったらいいなと思って。
他にも、土間スペースでワークショップをやったり。」
秋のオープンを前に、構想は膨らむばかり。
「川内には兼業農家さんが多いんです。野菜を作るのは大変なこと。
その野菜をメニューに使って、川内の豊かさを見てもらえたらいいな。」
また、震災によって途絶えてしまった食文化の継承も復活できたらと言う。
「元々、お母さんから子ども、お姑さんからお嫁さんへと受け継がれていた食文化も、震災を機に途絶えてしまいました。
でも、移住してきてそれを習いたい人も多いんです。川内の食文化を伝え、そして習う場所としても活かしていきたいです。」
他にも、川内に移住を考えている人が気軽に訪ねられる場になったら、住民と移住者が交流できる場としても使えたら、とアイディアは溢れる。
「川内村は、四季を通してとてもきれいです。村の人にとっては当たり前の光景でも、帰ってきて改めて見たら魅力がたくさんある。
子どもたちにも、村を好きでいてほしいです。」
古民家カフェに、人が集まる未来はもうすぐ。