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今年は同時開催! ふたば飲み×ふたばの声(おと)

8月29日(木)、双葉町の産業交流センター(F-BICC)の屋外広場で「ちいさな一歩プロジェクト9歩目~ふたば飲み×ふたばの声~」が開催されました。

ふたば飲みは、都市再生機構(UR都市機構)、ふたばプロジェクト、コトラボ合同会社が協働で取り組む「ちいさな一歩プロジェクト」として開催される、飲食交流イベントです。今回は地元音楽イベント「ふたばの声」との同時開催となりました。

福島第一原発のある双葉町は、2022年8月30日に町の中心部の特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。ちいさな一歩プロジェクトの第1回は避難指示解除の翌月に行われたそうです。

復興への歩みを示すかのように、ちいさな一歩プロジェクトは開催回数を「1歩・2歩」と表現しており、避難指示解除からちょうど2年となる節目の日を翌日に控えた今回の開催が「9歩目」となりました。コーヒーショップ1軒とワークショップブース2つでスタートした1歩目から2年がたち、9歩目は飲食、物販等を合わせて16軒が出店する賑やかなイベントとなりました。

イベントの責任者、UR都市機構の清水信宏さんにお話を伺うと、UR都市機構は主に双葉駅周辺や中野産業団地などの基盤整備を担当されているそうです。双葉駅の西側エリアで新しい町づくりにも取り組んできているが、住むところを作っても人が来てくれなければ、もともと町のあった双葉駅東側の地区を再生しなければ、復興は進まない…。

そこで、“双葉町に交流の場を作り、町に賑わい取り戻したい”との想いから、ちいさな一歩プロジェクトを立ち上げたそうです。
会場も、16時半のスタートから時間がたつにつれ、どんどん人が集まってきます。

ステージでは、町民有志による歌と演奏、フラダンスなどが披露されたほか、双葉町を中心に活動する標葉(しねは)せんだん太鼓保存会が和太鼓の音を会場に響かせます。

テーブル席がほぼ満席となり、隣接した芝生にレジャーシートを広げて盛り上がる人たちの中に、大学生のグループの姿がありました。UR都市機構と朝日新聞社が事務局となって実施した「学生が原子力災害被災地域の復興支援を考えるスタディツアー(キモチ、あつまるプロジェクト)」に参加している23名の大学生です。3泊4日の行程で大熊・双葉・浪江の3町を訪問し、まちづくり会社や事業者との交流、意見交換やワークショップを行う活動の一環で、このイベントにも参加していました。

日が落ちた後のステージには、東日本大震災を機に南相馬で誕生した、子どもたちの歌とダンスのプロジェクト「トモダチプロジェクト」がステージに上がり、元気いっぱいに歌って踊り、会場を盛り上げてくれました。
スタディツアーに同行していた、福島県を拠点に活躍するタレントのなすびさんもステージに上がり、子どもたちとの共演も見られました。

ふたば飲み8歩目の参加人数は200人、そして今回の9歩目に参加してくれた方は400人に上るとか。参加人数は回を追うごとに増えています。ふたばプロジェクトの武藤祐二さんも、その賑わいを「うれしいの一言」と笑顔で話してくれました。

一方、避難指示解除からの2年間で双葉町に実際に居住する方は徐々に増えてきてはいますが、8月1日現在で135人、震災前の2%にとどまっています。さらに、武藤さんによると135人のうち子どもはわずかに5人とか。まだまだ子育てには厳しい環境が続いているようです。

とはいえ、135人のうち半数以上が県外から移住してきた人たちだとか。着実に一歩ずつ、賑わいの戻りつつある双葉町の今後が楽しみに感じられるイベントでした。

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(脚注) 標葉せんだん太鼓保存会
1992年に設立され、福島県双葉町を中心に活動する太鼓団体。名前の由来は、双葉町や近隣を含む地名「標葉」と町の木「せんだん」。

  • 取材   HOOK編集部
    写真・文 本多正幸
  • ◆小さな一歩プロジェクト事務局
      UR都市機構/一般社団法人ふたばプロジェクト/コトラボ合同会社