INTERVIEW

インタビュー

福島の未来につながるモノを創る。生コ ンクリート製造「福島広野レミコン」の挑戦( 前編)

道路や橋、学校や病院、見上げるような高層ビル…。 私たちの日常生活に関わる施設は、多くのコンクリートで作られていることを知っていますか?

社会のインフラ整備に欠かせないコンクリートは、生コンクリート工場で製造されています。

「福島で復興・再生に向けて日々生コンクリートを供給するのが私たちの仕事です」

こう話すのは、福島県広野町でコンクリートの製造・販売をしている「福島広野レミコン株式会社」の工場長・白井茂さん。福島広野レミコンではどのような取り組みが行われているのでしょうか?広野工業団地内の工場にうかがってお話を聞きました。

福島広野レミコン株式会社

常務取締役 工場長 白井茂さん
注:「KAETSU」は福島広野レミコン株式会社のグループ会社のロゴです。

生コンクリートで建設現場を支え、復興を目指す

福島広野レミコン株式会社は、福島県広野町で生コンクリート(以下:生コン)の運搬・販売事業を展開している会社です。東日本大震災からの復興を目指し、インフラ整備に欠かせない生コンを安定供給するため、2018年に広野工業団地に生コンプラントを新設しました。

「広野町では震災によって堤防が決壊するなど、甚大な被害がもたらされました。復興に向けて護岸工事やインフラの整備が進められてきましたが、生コンが不足していたんです。そこで、この地域で生コンを安定供給するために工場を新設したんです」と工場長の白井さん。

福島12市町村には、5つの生コン製造会社があります。地域全体に生コンを行き届かせるために互いに協力して「相双生コンクリート協同組合」を設立し、地域一帯の建設現場を支えています。福島広野レミコンは、その中で最も南に位置する生コンクリート工場です。

「生コンって名前に『生』とつくように鮮度が命です。ですので、練り混ぜを開始してから荷卸し地点に到着するまでに90分が限度なんです。それ以上越えると品質に問題が発生し、処分しなければいけません。在庫はなく、常に製造したものを供給しなければいけないので、組合で協力して安定的に高品質の製品を提供できる体制を整えているんです」

地域に貢献できる誇りある仕事

「生コンって基本的に地産地消なので、地元に貢献できる仕事なんですよ」と白井さん。県内で採れた砕石や砂を使って製造し、90分圏内で運べる現場に卸すのだそうです。

製造工程はいたってシンプルです。砕石やセメント、水、混和剤が工場の中心部であるバッチャープラント内へ運ばれ、計量器を通って必要な量をプラントで練り混ぜ、ミキサー車へ。生コンが完成します。

その土地で採れたものをその土地で活用する。まさに地産地消です。

「自分たちが作った生コンが建物や道路、橋などに使われ、形になった姿を見るのは誇らしいですよ。この仕事の一番のやりがいだと感じています」と白井さん。

広野レミコンでは、現在までに福島第一原発や中間貯蔵施設、酪農施設などに建築資材として生コンクリートを供給してきました。そして今後も福島の発展のために、新たな事業に携わっていく予定です。

未来に向けて新しい挑戦を担う

現在、福島県では「再生可能エネルギー先駆けの地」となることを目指し、2040年を目途に県内エネルギー需要の100パーセント以上を再生可能エネルギーで生み出すという目標を掲げています。そこで、田村市、大熊町、浪江町、葛尾村にまたがる阿武隈地域の稜線上に風車を46基設置し、国内最大規模の陸上風力発電所として2025年春の完工を予定しているそうです。

福島広野レミコンでは、今後風力発電の建設にも生コンを供給していく見通しです。風車の土台となる部分のコンクリートを製造します。

「今後はますます忙しくなりますよ」と胸をふくらませます。

また、「技術的に難しいコンクリートにもどんどん挑戦していきたい」と白井さん。福島広野レミコンでは、製造技術向上にも力を入れているそうです。

2019年に「高強度コンクリート」の国土交通大臣認定を取得。高強度コンクリートは一般的に使用されているコンクリートより、圧縮強度が高く、主に高層建築物の柱部や橋梁などに適用されます。部材の断面を小さくできるため、重量負担の軽減やスパンの広さを大きく確保できるのだそうです。

未来に向けた挑戦の歩みは止まることがありません。

社員寮完備、充実した環境で質の高い仕事を

そんな福島広野レミコンでは、社員の大半が移住者です。どのようなサポート体制があるのでしょうか?

「2018年に新築した社員寮を完備しています。寮には冷蔵庫やテレビ、洗濯機など生活に必要なものがすべて設置されているので、新たに買い揃える必要なく生活をはじめられます。寮費も社員価格に設定されていて、福利厚生も充実しているのがうちの強みかなと思います」と白井さん 。

業界経験者が多くを占めますが、未経験者も歓迎しているそうです。「未経験の方に向けては、独り立ちできるまで先輩社員が付いてフォローしています。また、資格取得もコンクリート技士や主任技士を取得するための受験費用の補助がありますし、取得された方には資格手当を補助しています。今後は従業員全体の技術力を底上げして、より良い製品を生み出していきたいです」と白井さん。

最後に移住を考えている方に力強いメッセージをいただきました。

「生コン製造は社会に貢献できる非常にやりがいのある仕事です。新天地で技術を活かしたい、チャレンジしたいという方、福島の復興に貢献したいという方は、ぜひこちらに来て活躍してください」