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PLACE|一人ひとりのやりたいを実現する。川内村の「町分オルタナギャラリー」

ひと足お先に移住した先輩が、「誰かが移住してきたらまず連れて行きたい!」と思う、とっておきの場所をご紹介。今回は、文化活動が活発に行われている川内村の「町分(まちぶん)オルタナギャラリー」。

ここでは音楽ライブ、アート作品の展示、そのほかものづくりを体験するワークショップなど、さまざまなイベントが日々行われ、川内村で文化を発信する人々の集いの場となっている。

施設名の「オルタナ」という言葉は「alternative(=オルタナティブ)」が由来で、「既存のものにとってかわる新しいもの」という意味を込めて名付けられたそう。その名のとおり、開催されるイベントは、世界各国の音楽イベント、ベリーダンス講座、藍染め体験や、ものづくりのワークショップなどさまざま。代表の中村雄紀さんは、運営する上で「あらゆる可能性に対して開かれた場所」であることを大事にしているという。このスペースでは「利用する方のやりたいことが実現できる」ことが何よりも重要なのだ。

驚かされるのは、施設のほとんどがDIYによってつくられていること。ギャラリースペースはもちろん、ゲストハウスの寝室、浴室やトイレにいたるまで、時間をかけて自らの手で作り上げてきたそう。中でも一番大きな部屋にあるライブスペースは、音響機材や楽器が揃い、施設の顔になっている。宿泊施設が併設されているため、ミュージシャンの方が滞在しながら制作を行うこともある。

施設内にゲストハウスが設置された理由を中村さんに伺うと「川内村への移住の足がかりとなるよう短期、中期で滞在してもらえる場所にしたい」とのこと。

「移住者にとっての最初のハードルは、仕事探し、物件探し。都会のように物件や仕事が豊富にあるわけでもないですし、この場所に住んでみなければわからないこともたくさんあります。こればっかりはめぐり逢いですからね。いきなり移住を決めるのではなく、カジュアルに滞在して、移住にチャレンジするための場所になれば。」

ここに集うコミュニティの中では、イベントを通じての出会いが仕事に繋がったり、住居が見つかったりすることも。そうした出会いを生み出すために、中村さんは積極的にサポートをしており、オルタナギャラリーでの滞在を通じて川内村の近隣に移住を決めた方もいるのだとか。

ユニークなスペースが生まれた背景には、中村さんが海外生活をしていた際に影響を受けたというヒッピーカルチャーが根底にある。そのため、企業や会社のように営利目的ではなく、あくまでも村を楽しく、世界を楽しくしていくことが、この施設の目的だ。運営は中村さんの友人を中心に行われており、そのせいか、どこか自由でオープンな空気が流れている。

多くの人が出入りするこの場所には、きっとたくさんの「きっかけ」が溢れている。定期的にイベントが開催されているので、川内村に訪れた際は、ぜひ新たな出会いを探しに足を運んでみてはいかがだろうか?

(2019/12/9取材)

  • 取材・執筆:高橋直貴
    撮影:小林茂太
  • 町分オルタナギャラリー
    〒979-1201
    福島県双葉郡川内村上川内町分253